暦(こよみ)は大寒。
八雲立つ出羽の国、天童の園地は ただただ深い雪に包まれ、眠りの中にあります。
高い脚立の上、指先をかじかませて 独り、さくらんぼの枝を整えているところです。
ふと、真っ白な雪原に目を落とせば
そこには一筋の、小さき命の跡。 雪を蹴り、
どこまでも真っ直ぐに続く「うさぎの足跡」がありました。
迷いのないその歩みの先には、何があるのか。
今はまだ枯れ木のようなこの枝も 雪の下で清らかな水を吸い上げ、
静かに、けれど確かに、命の火を灯し続けています。
この足跡が辿り着く先は、きっと 雪が解け、あたらしき土が匂い立つ春の朝。
そして、初夏の六月の光の中で 真紅の雫を滴らせる、
さくらんぼの実りへと繋がっています。
私の振るう鋏の一刻みも 六月の空に輝く、赤い結実への大切な一歩。
雪の中に続く、あの足跡を信じて
また、次の枝へと手を伸ばす。



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